サウジの高官やハイランクのビジネスマン、大学教授などの人々が公然と長さ15−20cmで小指ほどの太さの黒っぽい小枝を噛んでいる姿を見て人々は驚くと思います。公衆の前での歯みがきはサウジアラビアでは当たり前のことで、ミスワックという天然の歯ブラシ（兼ペースト）を使います。これは一つで多くの効果を持ち口内のクリーンアップは勿論、白い歯をつくり、口臭をさわやかにします。アラブ世界では今も広く使われています。
イスラムの人々は預言者モハメッドの勧めによりミスワックを使っています。モハメッドは断食中に使用しており、祈り前の息のリフレッシュ用に使うよう勧めています。ミスワックは通常の歯ブラシと比べると、時と場所を選ばず自由に使えます。また、歯磨きペイストの中身を絞りだしたり、頑張って力強く磨いたり、口中で泡がたまったりそれを吐き出したりする必要はありません。
Arak tree (Salvadora Persica)は一般に歯ブラシの樹として知られ、根の部分が最良ミスワックとして使われます。Arak Treeはサウジアラビア、スーダン、南エジプト、チャド、東インドで育ち、モスラム世界の他の地方では見られず、代わりに他の樹がそれ用に使われます。モロッコでは樹皮の小片が、インドではNeem Treeが使われます。　　
ミスワックは理由ははっきり判りませんが、完全に男性だけの使用に限られているようです。若い世代よりも年取った世代に人気があるようです。サウジアラビアの若い世代の多くは朝は歯ブラシで歯を磨き、仕事や大学へはミスワックを携帯するという現代と伝統的風習をミックスしています。これは一日中常に息をリフレッシュするためです。特に祈りの前には欠かせません。
研究でミスワックについて詳しいことが判ってきました。化学分析によるとミスワックは歯の健康に有益な１９の天然物質を含み、それらの殺菌作用により口中の有害な微生物を消滅させ、タンニン酸は病気から歯茎を護る収斂性を持ち、その芳香な液により唾液が増加します。殺菌作用によりミスワックはそれ自体洗浄する必要はありません。持っている方向的に細かく分かれた先がまっすぐに歯間に入るため、通常の歯ブラシなら届きにく歯間の奥の部分にも細かい繊維が届きます。
サウジアラビアの都市の大きなスーパーや近代的な薬局ではミスワックは販売しておりません。購入するためには広場などやモスク前で販売している露店業者などを捜さないといけません。最初の使用前にミスワックは２~３時間水に浸します。これはカッターナイフ等で先っぽの１/4インチほどを裂き分ける際用に天然繊維を柔らかくほぐしておくためです。裂かれ、枝わかれした先を噛みほぐすと更に細か
く分かれます。歯茎から歯の先へ上下に動かすことにより、歯は磨かれます。ミスワックの味は“快く苦い”と言われています。

サウジの人々の笑顔の輝くばかりの歯の白さは、“自然（ミスワック）がデンタルケアーにおいてまさに秀でている”ことを証明しています